大ちゃん先生こと、高橋 大貴です。
今回も「家族信託」の活用例をお話ししていきたいと思います。
現在、「家族信託」が少しずつ普及し、実例が増えてきました。皆さまにはその具体例を、できるだけ多く発信していきたいと思っています。
【 活用例:「障害のあるお子さん」がいる家庭での家族信託 】
障害のあるお子さんをお持ちの方からのご相談が増えています。
たとえば、お子さんが精神障害をお持ちだったり、自閉症だったりした場合です。
また、昨今の高齢化社会では、たとえば90歳の親より先に、70歳の子どもが認知症になってしまうケースも出てきています。
そのような場合、親として、自分が亡くなったり 認知症になってしまった場合のことが心配です。そうなったら、障害がある子どもが一人で生活をしていけるだろうか? 他の家族は自分と同じようにその子を守ってくれるだろうか?と思い悩み、相談に来られます。
このような場合に、後見人制度と併用して活用すべきなのが「家族信託」です。
【とあるご家族の例】
お母さん(ご高齢。主に賃貸マンションの収入で暮らしている。)
お父さん(故人)
長男(精神障害があり、施設に入所している)
次男(元気だが遠方に住んでおり、すでに結婚して家族がある)
【お母さんがもし認知症になってしまった場合】
部屋を人に貸すことや、必要な工事を発注すること、お金に困ったときにマンションを売ることなど、一切の法律行為が行えなくなります。
加えて、お母さんが面倒をみている精神障害を持った長男のことが心配です。認知症になったら次男にお願いするしかないですが、賃貸マンションの収入はお母さんのものですので、何の手続きもなしに次男が自由に使うことはできません。お母さんの後見人を立てる必要があります。
【お母さんがもし亡くなってしまった場合】
遺言がなければ、障害のある長男は後見人を立てて、次男と遺産分割協議をすることになります。その場合、賃貸マンションが「共有」になる可能性があります。共有になってしまうと、後見人と次男が常に合意しなければ、不動産経営ができなくなってしまうのです。
遺言書があれば、「賃貸マンションを次男に相続させる」と書き残し、マンションが共有になることを避けることができます。しかし、今度は 次男が長男の面倒を見てくれるかどうかが心配です。遺言の付言事項で、「次男は、障害がある長男の面倒を見ること」と書き記したとしても、あくまで「お願い」となります。「長男の面倒を見ること」という負担を課した「負担付遺贈」などを活用しなければ、法的拘束力を持たせることはできないのです。
このような問題を解決する手段の一つが、「家族信託」です。
【家族信託の組成例】
信託開始要件 : お母さんの死亡、認知症診断、もしくは次男との合意
委託者 : お母さん(現在、賃貸マンション所有→次男を信じて不動産を託す)
信託財産 : 賃貸マンション と いくらかの金銭
受託者 : 次男(お母さんに信じて託されたので、ただ働きする)
受益者 : (一次受益者)お母さん →(二次受益者)障害がある長男
信託終了要件 : お母さんおよび長男の死亡
信託終了後の残余財産帰属権利者 : 次男 (母・長男が亡くなったら次男へ)
家族信託は、何も契約してすぐ始めないといけないということはありません。
今回の例では、「信託開始要件」を設定し、お母さんが亡くなるか、認知症になるか、次男と合意するか、いずれかで信託が開始することにしました。
認知症になった場合は信託が開始します。信託財産は受託者である次男に管理してもらいますが、信託財産の収益(家賃収入や、マンション売却時の手残りなど)は、受益者であるお母さんのものとなります。ですので、お母さんが存命の限りは、お母さんとお母さんが扶養している長男のためにしか使うことができません。
お母さんが死亡した場合は、長男が次の受益者になるようにしておきます。そうすれば、信託財産の管理を次男に任せつつ、収益は障害がある長男のためにしか使うことができないようにすることができます。
これで、ご自分の認知症の時の心配事と、障害のある長男の心配事を、主に「金銭面」で二つとも解決することができます。
【 その他、様々な形の家族信託があります 】
家族信託は、その他にもさまざまな活用法が見出されています。今後のメルマガにも、ぜひご期待ください。
また、具体的に「家族信託」や「遺言書」などについて相談されたい方は、事前予約制にて承っております。早めにお問い合わせ頂ければ幸いです。
以上