皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記、土地の境界に関する専門家です。
今回は法務局に備え付けられている図面についてよくある質問Q&Aをお届けします。
Q1 法務局で取得できる土地の図面とは何ですか?
A1
①地図・・・14条地図ともいわれ、国土調査(地籍調査)や区画整理などに基づいている為、下記②に比べ現地復元性が高い図面です。この地図がある地域とない地域が存在します。ない地域は下記②の地図に準ずる図面が備え付けられています。
②地図に準ずる図面(公図)・・・一般的に字図(あざず)と呼ばれ、現地復元性に乏しい図面です。土地の形状の概略や隣接土地の位置関係の概略を表すものとされています。
③地積測量図・・・分筆登記、地積更正登記(正しい面積に更正する登記)、土地表題登記(払い下げた土地等の登記)等の際、提出される図面で、現地復元性が高い図面です。
④地役権図面・・・地役権が土地の一部に存在する場合に提出される図面です。
Q2 どうして地図に準ずる図面(公図)は、ずれが大きいのですか?
A2
地図に準ずる図面の中でも特にずれが大きいのは、 「種類」の欄に「土地台帳付属地図」と書かれているものです。ずれの原因は作成された時期が古すぎるからです。
かつて、土地の大部分は農地であり、農民から年貢が財源でした。日本において土地の近代的所有権が確立したのは、明治維新後です。明治6年から14年までの短期間で、地租改正事業により全国的に土地調査と地価の確定が行われました。当時、測量方法は十字法、三斜法という原始的なもので、目測、歩測に頼ることもあったそうです。この測量で作られた「野取絵図」、「字図」が「公図」の原型となりました。さらに、明治18年から22年にかけ、更正がなされ、作成された地図は、「更正図」と呼ばれました。明治22年、土地台帳が課税台帳となり、この「更正図」が土地台帳付属地図、「公図」となりました。その後不動産登記法の改正等で法務局が公図を扱うようになりました。公図の「種類」の欄に「土地台帳付属地図」と書かれていることがあるのは、このためです。すなわち、IT社会と言われるこの令和の世において、法務局で発行されている「地図に準ずる図面」の原型の多くは、なんと明治時代に出来たものであるということです。
Q3 公図はどの位ずれているのですか?
A3
国土交通省のデータでは、「全国的な公図と現況のずれの傾向」として、
●ずれが10㎝未満の精度の高い地域 ・・・5.5%
●10㎝以上1m未満のずれがある地域 ・・・42.2%
●1m以上10m未満の大きなずれがある地域・・・49.8%
なんと全国の公図地域の約50%は、公図の形状と現地の形状に1m以上の大きなずれがあるということです。「字図は合わない」とよく聞かれると思いますが、データ的にもそのようです。
都市部では、全国的にも国土調査(地籍調査)が進んでおらず、「地図に準ずる図面」の地域が大多数を占めています。(地図に準ずる図面の中にも、地籍調査の図面や、区画整理の図面、大規模な分譲の際の図面が基となった場合もあり、比較的現地復元性が高い図面も存在します。)また、全国の都市部では正確な地図がある地域は20%程度と言われています。
相続による土地の売買や分筆の際、境界立会を行いますが、「地図に準ずる図面」の地域の場合、現況構造物の築造の経緯や境界標識の有無などが重要になってきますので、その時になって慌てる事がないように、帰省された時などに親子間で土地の境界線のお話をしておくことをお勧めします。