こんにちは、税理士の太田圭子です。さて今回は「マンション節税」がテーマです。国税庁が今年に入ってついに、マンション評価方法の見直しについて検討を始めたことにより、新聞やニュースで「マンション節税が防止される!」と騒がれています。今回はそんなマンション節税についての今までとこれからを考えてみます。
1、そもそもマンション節税とは?
マンションを国税庁が定めた評価通達に従って評価した場合、その評価額は、市場価格の半分以下となることが多く、最も差額の大きい東京では市場価格の3割程度、私の地元、福岡で4割程度になるといわれています。この差額を利用して相続税の負担を減らすスキームがマンション節税です。例えば東京で時価1億円のマンションならば、その相続税評価額は3千万円程度となり、1億円をそのまま現金で遺すより、生前にマンション投資をした方が、約7千万円の相続財産が圧縮されることなります。相続税の税率は10%から最高55%の累進税率なので、最大で3,850万円もの相続税負担が減少します。税率の高い富裕層ほどその恩恵を大きく受けることになり、都心のマンション景気を支えているとも言われています。
2、何が問題?マンション節税
現行のマンションの評価方法はタワマンなど存在しなかった半世紀以上前に定められたもので、市場価格との乖離は以前から問題視されていました。決定打となったのが令和4年4月の最高裁判決です。銀行から10憶円を借りて購入した約14憶円分のマンションを評価通達により評価した結果、相続税が0円となった申告について、その評価方法が認められず、不動産鑑定による評価が適用され、2憶円を超える相続税が追徴課税となりました。
「評価通達で評価することが著しく不適当な場合は国税庁が評価額を決める」という伝家の宝刀「評価通達6項」が適用されたためです。後を絶たないマンション節税すべてに伝家の宝刀を抜くのは大変ですから、いよいよ評価方法自体を見直そうということになったんですね。
3、どうなる?マンションの評価
今時点ではあくまで検討段階ということですが、市場価格の6割程度が評価の下限になりそうです。今まで3割~4割で評価できていたのですから、当然相続税の増税が見込まれます。
4、節税目的でなくても増税の可能性が!?
国税庁は今回の評価方法の見直しについて「マンションの評価額と時価の乖離を適切に是正することを目的とするものであって、一部の租税回避行為の防止のみを目的として行うものではない。」とコメントしています。言い換えれば、節税目的でマンションを購入していなくても増税の影響があるということです。そして、今まで相続税が課税されなかった人についても税負担が生じる可能性がでてきました。
例えば相続人が子供一人のみで、時価1億円のマンションを相続した場合、相続評価が7割減の3千万円であれば、基礎控除(一人の場合は3,600万円)以下となり、今までは相続税が課税されませんでした。ところが評価方法の変更により6千万円となると約310万円の相続税が発生してしまいます。
5、今後は使えなくなる?マンション節税
マンションの評価方法が見直された場合、マンション投資による節税効果は薄れることが予測されます。
但し、今の案では評価額が増額になるものの、やはり時価の6割程度の評価が想定されているため、今のところ、節税効果がなくなるわけではなさそうです。
6、最後に
マンション評価の見直しは、すべてのマンションオーナーに影響を及ぼすものとなりそうです。全容が明らかになるには、まだ時間がかかりそうですが、今後も記事にしていきたいと思います。